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- 2012/05/18 ダービー候補、ボンファイア
- 2012/05/17 2012クラシック馬のプロフィール(4)
- 2012/05/17 ヨークのダンテ開催スタート
- 2012/05/16 読売日響・第515回定期演奏会
- 2012/05/16 クレオパトラ賞
- 2012/05/15 2012クラシック馬のプロフィール(3)
- 2012/05/14 ディープ産駒、フランスで戴冠
ダービー候補、ボンファイア
昨日はヨーク競馬場のダンテ・ミーティング2日目、開催のタイトルともなっているダンテ・ステークスが行われましたが、その前に。
この日もヨーク競馬場は good の馬場、ミドルトン・ステークス Middleton S (GⅡ、4歳上牝、1マイル2ハロン、88ヤード)からレポートしましょう。
2頭取り消して9頭立て。去年の2着馬でゴドルフィンのサジハー Sajihaa (9対2の2番人気)、去年ミッドデイ Midday で制したセシル厩舎のタイムピース Timepiece 、在位60年のエリザベス女王が所有するセット・トゥー・ミュージック Set To Music など多彩なメンバーが揃いましたが、7対2の1番人気に支持されたのは、前走ニューマーケットでダーリア・ステークス(GⅢ)に勝ったイッツィ・トップ Izzi Top 。前走の内容の良さからG戦連勝に期待がかかります。
レースはファロン騎乗のモヘディアン・レディー Mohedian Lady が逃げ、本命イッツィ・トップが2番手、これをマークするようにサジハーが3番手で進みます。
直線では先行した人気2頭の叩き合いとなり、ウイリアム・ビュイック騎乗のイッツィ・トップがデットーリ騎乗のサジハーに1馬身半差を付けて優勝、見事期待に応えました。3着は更に1馬身差で3番人気(6対1)のアイム・ア・ドリーマー I'm A Dreamer 、1着から3着まで人気通りの決着です。セット・トゥー・ミュージックは6着、タイムピースが8着。
勝馬を管理するジョン・ゴスデン師は、ウイリアム・ビュイック騎手共々初日にミュージドラ・ステークス(ザ・フューグ The Fugue)を含めダブルを達成しており、これが開催3勝目と絶好調。
イッツィ・トップはこれで今シーズンG戦に連勝、元々3歳時はオークスで3着した実績馬。オークスに先立つニューバリーのリステッド戦ではオークスを制したダンシング・レイン Dancing Rain を破っており、GⅠに勝つ素質は備わっていると言えましょう。ゴスデン師によれば、3歳から4歳にかけて急成長している由、今期はナッソー・ステークス、オペラ賞でGⅠ制覇を目指す青写真です。
ところでイッツィ・トップの母ジー・ジー・トップ Zee Zee Top も9年前(2003年)にミドルトンを制しており、母子制覇というドラマもありました。
そして愈々ダンテ・ステークス。近年のダービー・トライアルとしては最もダービーに近い一戦として注目されます。出走馬は7頭、1番人気(11対4)には未だ1戦のみの新星アーネスト・ヘミングウェイ Ernest Hemingway 。今年ダンダルク競馬場のデビュー戦を10馬身差で圧勝したガリレオ Galileo 産駒で、オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗、言わば先物買いの1頭でしょうか。
同じく無敗(2戦2勝)のマンディーン Mandean は2歳時アンドレ・ファーブル厩舎に所属してクリテリウム・ド・サン=クルー(GⅠ)を制した馬で、今期はゴドルフィンに移籍しての初戦。2000ギニー6着のフェンシング Fencing (7対2、3番人気)、クリテリウム・インターナショナル3着馬ボンファイア Bonfire (3対1、2番人気)など既に実績を残している馬たちにもチャンスは充分でしょう。
レースはスタート良く飛び出したアーネスト・ヘミングウェイの逃げ、ペースは速く、各馬の実力が十分に発揮できる展開となりました。
直線、先ず飛ばしていたアーネスト・ヘミングウェイが後退、最後方を進んだ3勝(4戦)馬エクティハーム Ektihaam が果敢に仕掛けて先頭に並び掛けましたが、2番手に付けていたボンファイアが絶好の手応えで抜け出し、エクティハームを4分の3馬身退けての快勝。ジミー・フォーチュンが本気で仕掛ければ、差はもっと開いていたであろう余裕の勝利です。3着は4馬身の大差が付いてゴスデン/ビュイック・コンビのフェンシング。4着ドリーム・チューン Dream Tune までは更に10馬身の大差。マンディーンは6着、アーネスト・ヘミングウェイも追うのを止めて大差のシンガリに敗退しました。
アンドリュー・ボールディング師が管理するボンファイアは、先に記したように2戦目のクリテリウム・インターナショナル(GⅠ)で3着(勝ったのは2000ギニー2着のフレンチ・フィフティーン French Fifteen)、これが今期デビュー戦でした。近年のダンテ・ステークスからはシャーラスターニ Shahrastani 、リファレンス・ポイント Reference Point 、モティヴェイター Motivator 、オーソライズド Authorized とダービー馬が多く輩出しており、当然ながらボンファイアにも多くの期待が掛かります。最も高いオッズは6対1に上がりました。
また同馬のオーナーは、名馬ハービンジャー Harbinger で知られるハイクレア・シンジケート。この共同馬主組織はオークス候補ヴォウ Vow も所有しており、今年のエプサム・クラシックは大いに盛り上がるでしょう。更に父マンデュロ Manduro は凱旋門賞に最も近い存在ながら直前に故障して引退したステイヤー、今回は敗退したマンディーン共々その初産駒という期待もあります。
一方2着のエクティハーム陣営(ロジャー・ヴァリアン厩舎)、この馬にはダービー登録が無く、1マイル半は血統的に長いという見解。追加登録の道もありますが、元々登録のある仏ダービーに向かう可能性が高いようです。
2012クラシック馬のプロフィール(4)
引き続きフランス・ギニー馬の血統紹介、今回は仏2000ギニーで穴を開けたルカイヤン Lucayan です。人気通りダバーシム Dabirsim が勝ってくれれば血統調べも楽でしたが、この馬には手古摺りました。
ルカイヤン(2002年生まれ、鹿毛)は父タートル・ボウル Turtle Bowl 、母ラ・ヴルタヴァ La Vltava 、母の父グランド・ロッジ Grand Lodge という血統。この血統も最初に父について紹介する必要があるでしょう。
タートル・ボウルと聞いて、ああ、あの馬か、と思い当たる人は余程の海外競馬ツウ。多くの人は初めて耳にする馬名かも知れません。
タートル・ボウルの父はダイヒム・ダイアモンド Dyhim Diamond 。その父はナイト・シフト Night Shift で、更に父がノーザン・ダンサー Northern Dancer です。ここまでくれば知らない人のいない堂々たるノーザン・ダンサー系。
多くの人がピンと来ないのは、現役時代フランソワ・ロホー師が管理する、フランス・ローカル競馬から出世した馬だからでもありましょう。地方競馬で勝ち進み、仏2000ギニーに挑戦するもシャマーダル Shamardal の8着。続くジョンシェール賞(GⅢ)でG戦に初勝利を挙げ、連戦で臨んだジャン・プラ賞(GⅠ)で大金星。この勝利がタートル・ボウルに種馬としての道を拓いたと言えるでしょう。
4歳シーズンもローカルからスタート(2勝)し、イスパハン賞2着、イギリスに遠征してクィーン・アン・ステークスが3着、ジャック・ル・マロワ賞も3着、現役最後となったムーラン・ド・ロンシャン賞8着。GⅠに4戦続けて挑戦し、そこそこの成績を残しました。
1年休んで2008年から種牡馬として供用、初年度産駒は43頭と少ないながらクラシック馬ルカイヤンを出しました。更に英2000ギニーで2着に食い込んだフレンチ・フィフティーン French Fifteen もタートル・ボウル産駒。この馬は2歳時にクリテリウム・インターナショナルを制しており、タートル・ボウル産駒は既にGⅠ馬2頭が2勝。俄かに脚光を浴びる存在になったと言えましょう。
タートル・ボウルは以上にして、本題の牝系に入ります。
先ず母ラ・ヴルタヴァ(2000年鹿毛)。「モルダウ河」という意味の同馬は、現役時代が22戦2勝。これも地方競馬のパンタル厩舎に所属していました。フランスの地方競馬は資料が乏しく、勝鞍の詳細は調べが付きませんでした。来年のレースホースを待つしかないでしょう。
従って詳しい繁殖成績も不詳ですが、ルカンヤンの3つ上に当たるカールフ・モースト Karluv Most (2006年、鹿毛、牡馬、父デラ・フランチェスカ Della Francesca)がスペインでスペイン・セントレジャー(GⅠ、2800メートル)とマドリッド大賞典(GⅠ、2500メートル)に勝ち、彼の国のクラシック馬になっているそうです。
つまりルカイヤンは母にとって2頭目のクラシック勝馬。カールフ・モーストの父デラ・フランチェスカはダンジク Danzig 産駒で、愛2000ギニー3着して10ハロンのGⅢ(ガリニュール・ステークス)に勝った馬。配合を考えれば、ルカイヤンがダービー距離でも問題ないと思われます。陣営では仏ダービー(2100メートル)をパスしてマイル路線を歩む旨の意思表示を示していますが、馬自身の性格がマイラー・タイプなのかも知れません。
2代母ラヴァンダ Lavanda (1993年、鹿毛、父ソヴィエト・スター Soviet Star)は1戦のみで未勝利。レッド・カー競馬場の2歳新馬戦(6ハロン)にデットーリ騎乗で1番人気に支持されましたが、4着に終わっています。
彼女の繁殖成績も詳しいデータが他に入りませんでしたが、イエペス Yepes (2005年、鹿毛、牡馬、父キャッチャー・イン・ザ・ライ Catcher In The Rye)という馬がやはりスペインで走り、現地のステークスなど4勝したという記録があるようです。ここまではスペインと縁の深い牝系。
3代母のワン・ライフ One Life (1985年、黒鹿毛、父レミグラン Lemigrant)は未出走。この馬がフランスに渡り、ルカンヤン直接の牝系の礎となったようですね。
ここでの注目は、ワン・ライフの娘キュンティア(1995年、青鹿毛、父ダルシャーン Darshaan)が日本に外国産競走馬として輸入され、京都の渡月橋ステークス(1600メートル)など2勝、阪神3歳牝馬ステークス(GⅠ)で2着(勝馬はアインブライド)していることです。
キュンティアの娘オディール(2005年、脚毛、牝馬、父クロフネ)が2歳時にファンタジー・ステークス(GⅢ)を制し、桜花賞(12着)、オークス(5着)にまで駒を進めたのは4年前のこと。
ところでワン・ライフの別の娘、キュンティアの半姉に当たるノー・リハーサル No Rehearsal (1989年、鹿毛、父バイヤモン Baillamont)がキュンティアの父でもあるダルシャーンと配合して産まれたのがジェラニ Jelani (1999年、鹿毛、牡馬)。この馬はダービーに出走して4着(勝馬はハイ・シャパラル High Chaparral)に食い込んで周囲を驚かせた後、ヘイドックのリステッド戦(1マイル半)に勝ってステイヤーとしての能力を証明しています。キュンティアとは極めて近い配合を持っており、今後キュンティアから伸びていくファミリーにも注目する必要がありそうですね。
そして愈々4代母の登場。それが彼のパサドーブレ Pasadoble (1979年、鹿毛、父プルーヴ・アウト Prove Out)なのですね。パサドーブレと聞いてピンと来ない人はモグリ、とまでは言いませんが、この凄い牝馬について細部まで取り上げるのは大変なスペースを必要とします。
出来るだけ簡潔に纏めれば、パサドーブレは名馬ミエスク Miesque (1984年、鹿毛、父ヌレエフ Nureyev)の母。ミエスクと言えば英仏1000ギニーの他にBCマイル2連覇など英仏米でチャンピオンに選ばれた80年代を代表する名競走馬。
ミエスクが凄いのは、競走馬として第一級だっただけでなく、繁殖牝馬としてもフランス2冠牝馬のイースト・オブ・ザ・ムーン East of the Moon (1991年、黒鹿毛、父プライヴェイト・アカウント Private Account)や仏2000ギニーを制して種牡馬としても一大王国を作りつつあるキングマンボ Kingmambo (1990年、鹿毛、父ミスター・プロスペクター Mr. Prospector)を出したことでしょう。
ここで息抜きに一つ面白いエピソードを紹介すると、ミエスクはパサドーブレの初仔。子育てに慣れない母は娘を邪険に扱ったのだそうです。ミエスクの若駒時代に他の馬を怖がるところがあったのは、母の仕打ちが影響した由。名馬ミエスクが2歳時にはブリンカーを装着して競馬に臨んだのには、そんな経緯があったからでした。牡馬を相手に活躍したのは、若き日の経験が何物にも負けない根性を育てたのかも知れません。
5代母サンタ・クィラ Santa Quilla (1970年、黒鹿毛、父サンクタス Sanctus)は、ブルックリン・ハンデに勝ったシルヴァー・スープリーム Silver Supreme (1978年、脚毛、牡馬、父アル・ハッタブ Al Hattab)の母。
更には仏牝馬2冠と凱旋門賞でいずれも2着の名牝コンテッス・ド・ロワール Comtesse de Loir 、アメリカでコーチング・クラブ・アメリカン・オークスを制したネクスト・ムーヴ Next Move (1947年、黒鹿毛、父ブル・リー Bull Lea)などもこの牝系の出身です。
これ以上活躍馬を列記してもキリがありません。所謂クラシック血統と呼ばれるものがあるとすれば、ルカイヤンを産んだファミリーも間違いなくその一つに加えられるでしょう。
ファミリー・ナンバーは、20。比較的最近になって勢力を伸ばしてきている血脈です。
ヨークのダンテ開催スタート
昨日(5月16日)から3日間の予定でヨーク競馬場のダンテ開催が行われています。初日の昨日はG戦が2鞍行われました。6月初めのダービー・オークスまで2週間ほど、クラシックに向けた最終トライアルの舞台がヨークですね。
最初はオークスのトライアルとして重要な地位を占めるミュージドラ・ステークス Musidora S (GⅢ、3歳牝、1マイル2ハロン88ヤード)。馬場は good まで回復、漸く春先の悪天候も収まってきたようです。
6頭が出走してきましたが、勝負になりそうなのは3頭。中でもオブライエン厩舎が送り込んできたトゥワール Twirl は去年8月に初勝利、シーズン初戦のパーク・エクスプレス・ステークス(GⅢ)2着を一叩きされ、ここが試金石。主戦騎手ジョセフ・オブライエン(同馬には初騎乗)を鞍上に5対6の1番人気に支持されていました。
相手は前走1000ギニーで4着に食い込んだザ・フューグ The Fugue の15対8(2番人気)、これにネル・グィン・ステークスを人気薄で制したエセンティービィー Esentepe が何処まで、という前評判。
スタートでファロン騎乗のアニシード Aniseed が出遅れ、好スタートのトゥワールが先頭に立ちます。しかし直ぐに出遅れたアニシードが外からハナを奪い、トゥワールは2番手。ザ・フューグは内々3番手に待機します。
直線、バテたアニシードを挟むように外(スタンドに近い方)からトゥワール、内からはザ・フューグが抜けて2頭の一騎打ち。ジョゼフがムチを使って懸命に追うのに対し、ザ・フューグのウイリアム・ビュイックは持ったまま。結局本命馬に4馬身半差を付ける快勝でした。追えば着差はもっと開いたでしょう。3着は更に3馬身4分の3差でエセンティーピー。
オークスに向けて存在感をアピールしたザ・フューグはジョン・ゴスデン師の管理馬。一般的には「キャッツ」で名高いロイド=ウェッバー卿の持ち馬といった方が馴染み易いでしょうか。
ザ・フューグ、2歳時は10月末にニューマーケットの新馬戦に勝った1戦のみ。今期初戦でいきなり1000ギニーに挑戦、道中他馬と接触して負傷するアクシデントがありながら4着に来た能力の高い馬です。一時は現役続行も危ぶまれましたが、幸い傷は軽く、回復も急。
未だ経験不足から若さを見せるところがありますが、彼女にとっても試金石となるトライアルを見事に通過しました。オークスの課題は更に2ハロン伸びる距離でしょうか。オークスのオッズは7対2から5対1に跳ね上がり、有力候補にリストアップされてきました。
続いては短距離のGⅡ、デューク・オブ・ヨーク・ステークス Duke of York S (GⅡ、3歳上、6ハロン)。1頭取り消して13頭立て。クラシックには目も向けない3歳馬3頭が古馬の胸を借ります。
2対1の1番人気は、去年の短距離ハンデ戦線で抜けたスピードを見せ付けた5歳せん馬のフーフ・イット Hoof It 、これがシーズン初戦ながら最も得意とする6ハロン戦に期待が集まりました。
前走ニューマーケットのパレス・ハウス・ステークス(GⅢ)に勝って2番人気(7対2)に支持されたメイソン Mayson はゲート内で気持ちがハイ、本来の競馬が出来ません(結果どん尻13着)。
ダッシュ良く飛び出したのはオーストラリアからゴドルフィンに移籍してきたソウル Soul でしたが、1番枠(スタンドから最も遠い最内)からスタートしたボガート Bogart が最後の1ハロンでは先頭。しかしここからボガートが外(スタンド側)に寄れ始め、連鎖的にゴチャついたゴール前、不利を被る馬も何頭か見えます。
ここで後方に待機していた伏兵(25対1、並んだ9番人気)ティドリウインクス Tiddliwinks が乱戦を横目に見ながら内を通って抜け出し、2着以下を頭差抑えてサプライズを演出しました。大接戦の2着争いはスタンド側に切れ込みながら3頭、外のザ・チェカ The Cheka が2着、最後に内から2着争いに加わったソサエティー・ロック Society Rock が首差3着、真ん中に入ったボガートは頭差4着という結果。
あとは3馬身4分の3差で本命フーフ・イット(これも不利あり)が5着、フランスから遠征したレスティアダルジャン Restiadargent も何度か前が塞がる不利もあって7着に終わっています。
勝ったティドリウインクスと4着ボガートは、共にケヴィン・ライアン厩舎。勝馬にはジェイミー・スペンサーが騎乗していました。去年のこのレースでは3着していた馬、今シーズンはこれが2戦目で、昨年を上回る調子の良さだそうです。
ところで昨日はアイルランドのナース競馬場でもG戦が1鞍行われました。ブルー・ウインド・ステークス Blue Wind S (GⅢ、3歳上牝、1マイル2ハロン)、good to yielding の馬場に6頭立て。出走条件は3歳上ですが、6頭全てが3歳、事実上のオークス・トライアルとなりました。
多くがキャリアの浅い馬、1番人気(3対1)はシュベーラ Shebella とアルーフ Aloof が分け合っていましたが、共に凡走し、夫々5・6着のシンガリ争いを演じてしまいました。
優勝は並んだ2番人気(7対2)のプリンセス・ハイウエイ Princess Highway 。逃げるアルーフの2番手に付け、直線入口で抜け出しての快勝です。2着は1馬身差でアーラース Aaraas 、更に1馬身4分の3差でオブライエン厩舎のウォズ Was が3着。
デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレンが騎乗したプリンセス・ハイウエイはこれが3戦目。2歳初戦は競馬になりませんでしたが、3歳デビュー戦(3月、レパーズタウン競馬場)で後にチェシャー・オークス2着となるベターベターベター Betterbetterbetter を破って優勝していました。
同馬は愛1000ギニーと愛オークスに登録がありますが、クラシックには向かわずロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークスを目指す由。去年のブルー・ウインドを制したバニンパー Banimpire もリブルスデールを勝ちましたし、母(イレシスティブル・ジュエル Irresistible Jewel)も同レースを制している(2002年)というのが根拠だそうです。
読売日響・第515回定期演奏会
昨日は雨の中、サントリーホールで読響の5月定期を聴いてきました。正指揮者の称号が今シーズン一杯で切れ、来年4月以降は首席客演指揮者に就任する下野竜也の指揮。
プログラムは日本初演の作品を含む、如何にも下野ならではの拘った内容。プログラム・ノートによれば「ツウ好みの一晩」ということになります。拘りの結果は以下。
ライマン/管弦楽のための7つの断章~ロベルト・シューマンを追悼して~(日本初演)
シューマン/ヴァイオリン協奏曲
~休憩~
シューマン/交響曲第2番
指揮/下野竜也
ヴァイオリン/三浦文彰
コンサートマスター/小森谷巧
フォアシュピーラー/江口有香
一目見て判るように、ローベルト・シューマンに捧げる夕べ、とでも言いましょうか。プログラムには明記されていませんが、下野の拘りシューマン鑑賞会の趣。あれ、シューマンのアニヴァーサリーって一昨年だったよなぁ。何で今頃シューマン? だから下野なんだよ。ということでしょうかね。
シューマンを特集するにしても、マンフレッド序曲/ピアノ協奏曲/交響曲第3番ではないのが、これまた如何にも下野。シューマンの3曲ある協奏曲で一番演奏されないのがヴァイオリン協奏曲でしょうし、4つの交響曲で最も地味なのが2番。冒頭は更に捻ってシューマンを引用した現代モノ。
私のような天邪鬼には打って付けのプログラムですが、一般的にはどうなんでしょう? 今回は止めておこう、と考えた定期会員も少なからずいたのじゃないでしょうか。
さすがに不味い、と思ったか事前に下野によるプレトーク。内容はライマン作品の紹介と、下野のシューマン感がテーマでした。
ステージをセットしなおして楽員登場。あれれ、変だぞ。
スクロヴァチェフスキ以来の弦楽配置を変更し、この日はチェロが右端に座るパターン。先々代アルブレヒトが用いていた配置で、今回のプログラムもアルブレヒト好みのもの。下野としては先輩に敬意を表しての配置だったのでしょうか。質問を受け付けてくれれば、個人的には真っ先に聞きたいポイントでした。
登場した楽員にも、あれれ。先に賑々しく退団した生沼氏がヴィオラ・トップに座ります。ま、良くあることで別に驚くほどのことではありませんが、コンマスの隣に江口が座ったのには驚きました。日本フィルの定期と見間違えたくらい。すわ読響得意の引き抜きか、と思ってプログラムをひっくり返してみましたが、何も書いてありません。ま、通常のゲストということで理解しておきましょう。
さて冒頭のライマン。実は今年から来年にかけて日生劇場が開館50周年を記念してライマンの歌劇を2作上演することになっていて、指揮を受持つ下野がライマン作品を調べていて遭遇した由。
下野が「ライマンを通してシューマンの魔力へと取り込まれてしまった」作品。日本初演ですからもちろん耳にするのは初めてですし、レコードも経験なし、楽譜も見たことはありません。私も10年前ならショットからスコアを取り寄せて予習したでしょうが、今ではそんな気力も興味も沸きません。
下野氏には申し訳ないけれど、実際に聴いてみてもほとんど感興は起きませんでした。ライマンのオペラ、と言ってもチョッと引けてしまいます。私にとっては逆効果だったかも。
全体は通して演奏される7つの断章。断章Ⅲで、シューマンが自殺を図る直前に作曲した「最後の楽想による幻覚の変奏曲」(WoO24)のテーマが引用されるという仕掛けです。(この滅多に演奏されないピアノ曲は、プレトークでスピーカーを通して紹介されました)
プログラムには譜例が掲載されていました(下野氏はフラットが二つ印刷漏れ、という指摘も)が、何のことはない、これは次のヴァイオリン協奏曲第2楽章でヴァイオリン・ソロが弾き出す音形と全く同じもの(調性も同じ)。こういうところに下野の拘りの徹底振りが表れていますね。
2曲目のヴァイオリン協奏曲も、恐らく私にとっては「初演」だったかも知れません。もちろんレコード(シェリング盤)で聴いていましたし、1937年に初めて印刷されたショット版も手元にあります。
今回改めて聴きなおしてみて、かつてヨアヒム、クララ、ブラームスが価値を認めなかったことが不思議でなりません。
それでもヨアヒムの場合は理解できます。第一に聴かせどころのカデンツァが無いし、演奏が結構難しい割には聴き映えがしない。客席の喝采を受けにくい曲想であることは確かです。
不可解なのはクララとブラームスの態度。当時の音楽趣味が現在とはかなり隔たったものだ、とでも考えるしかないでしょう。
作品で特に魅力的なのは第2楽章。ここはチェロ・ソロ(今回は嶺田健のソロ)との絡みがあり、シンコペーションによる打点の暈しが如何にもシューマン。ほとんどリートの世界で、WoO24にも共通する「幻覚」(ドイツ語では Geistervariationen 、昔は宗教的変奏曲と訳していましたっけ)が却って新鮮に聴こえてくるのでした。
この協奏曲をレパートリーにしているヴァイオリニストは決して多くは無いでしょう。三浦ジュニアも最初は違和感があったようですが、ヴェルニコフのレッスンを受ける内に理解が深まったのだとか。既にミュンヘンで演奏した経験があるそうです。
第1楽章展開部から再現部に移行するパッセージ(第2主題の変奏でもありましょう)の丁寧な意味付けは特に心に残りましたし、第3楽章のテンポが絶妙。このテンポは三浦のものか下野のものかは判りませんが、ベートーヴェンでもメンデルスゾーンでもなく、もちろんブラームスとも違うシューマン独特の味わいでしょう。
また第2楽章を聴いていて、これがベートーヴェンの三重協奏曲とブラームスの二重協奏曲の橋渡しになっている様にも感じられました。シューマンを封印したブラームスが、実は頭の片隅で師を意識していたのかも知れません。
ヨアヒムならずともシューマンを弾いた後は腕がムズムズするのは仕方ないのでしょうか。彼の名刺代わりの一曲、パガニーニのネル・コル・ピウがアンコールされ、会場は大いに沸きます。前回横浜でチャイコフスキーを弾いた時にも取り上げたアンコール曲。
メインの交響曲は、如何にも下野らしく元気の良いシューマン。精神を病んだ巨匠のくすんだ響きはほとんど感じられず、極限まで突き詰めた快速、豪快なシューマン。
一般的にシューマンのオーケストレーションは問題が多く、「鳴らない」というのが定説でした。今回の演奏はむしろ「鳴り過ぎ」。時代と共にシューマンへの評価、演奏スタイルも変わってきたな、と実感されたコンサートでした。
クレオパトラ賞
昨日はサン=クルー競馬場でクレオパトラ賞 Prix Cleopatre (GⅢ、3歳牝、2100メートル)が行われています。馬場は回復して good 。
仏オークスへのトライアルとして知られている一戦ですが、これに先立つ1か月ほど前(4月17日)に同じ競馬場、同じコースでペネロープ賞(GⅢ)が行われていました。例年、ペネロープ組からクレオパトラに参戦する馬が何頭かいますが、勝馬には2キロのペナルティーが課せられますので、パスする馬も多いようです。
ところが今年はペネロープ勝馬のヴァルドレルヒェ Waldlerche が負担重量を覚悟で挑戦してきました。前走での逃げ切り勝ちが圧勝だったため、ここも無事に通過できるという判断でしょう。同じペネロープ組からは4着だったブロコッテス Brocottes も参戦。
このレース10勝と最多勝利調教師記録保持者のアンドレ・ファーブル厩舎、セントレジャー馬マスケッド・マーヴェル Masked Marvel の妹という血統的魅力もあって、このヴァルドレルヒェが3対5の断然1番人気ですが、出走馬5頭の中にはヴァルドレルヒェ以外にも無敗馬が2頭もいて、予断を許さぬメンバー。
前走同様マクシム・グィヨン騎乗のヴァルドレルヒェが積極的にハナを奪い、後続を離して逃げ切りを画します。しかし先頭で向かった直線、意外や本命馬は脚を失くして後退。替って3番手を進んでいた2番人気(47対10)のダルカラ Dalkala が楽に抜け出すと、2着プペー・フラッシュ Poupee Flash に4馬身の大差を付けての逆転劇。3着には3馬身半差でラ・コンケランテ La Conquerante が入り、ヴァルドレルヒェは更に4馬身置かれた4着惨敗です。
期待を裏切ったヴァルドレルヒェは初黒星(ここまで2戦2勝)、ペネロープが soft だったのに対し、今回は good の馬場状態だったのが敗因かも知れません。同じコース、同じ距離で前走は2分19秒80、今回が2分13秒70と、6秒以上速いタイムによる決着だったことが結果を物語っているように思えます。
因みにクレオパトラ賞のレース・レコードは、去年ガリコヴァ Galikova がマークした2分8秒00、昨日より5秒以上速いタイムでの決着でした。
逆に勝ったダルカラはこれで3戦3勝となって無敗をキープ。オーナーのアガ・カーンはこのレース5勝目、調教するアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ師は4勝目、騎乗したクリストフ・ルメールは2勝目となります。
クレオパトラ賞はコースこそ違えど仏オークスと同じ距離、絶好のトライアルではありますが、クレオパトラ/仏オークス連覇はこれまで1957年のセリソール Cerisoles 、1976年のポーニーズ Pawneese の2例しかありません。去年レコードで勝ったガリコヴァは、クラシックでは2着でした。
またペネロープ/クレオパトラのダブルも、前記ポーニーズと1993年のウィミス・バイト Wemyss Bight の2頭に留まっています。これを見ても、ペネロープ/クレオパトラ/仏オークスのハットトリックに加えて英オークスも制したポーニーズの強さには舌を巻くものがあります。ポーニーズは連日紹介しているダニエル・ウイルデンシュタインの勝負服で走った馬でしたね。
ビューティー・パーラーにとってオークスのライヴァルと目されていたヴァルドレルヒェが頓挫、替って新たにダルカラが名乗りを挙げたという情況でしょうか。
2012クラシック馬のプロフィール(3)
今回と次回はフランスのギニーを制した2頭を取り上げます。最初は仏1000ギニーに勝ったビューティー・パーラー Beauty Parlour から。
日本でもすっかり有名になってしまいましたが、ビューティー・パーラーは父ディープインパクト(Deep Impact)、母バステット Bastet 、母の父ジャイアンツ・コーズウェイ Giant's Causeway という血統。日本産種牡馬ディープインパクトに最初の海外GⅠ制覇をもたらした馬です。
ここでは牝系の考察がテーマですが、最初に父ディープのことにも触れておきましょう。と言っても、この名馬については既に詳細が語り尽くされています。ここはやや視点を変えて。
ビューティー・パーラーは、ディープインパクトにとって3頭目のステークス勝馬ですね。その最初はビューティー・パーラーの全兄にあたるバロッチ Barocci 。ディープの初年度産駒で、メゾン=ラフィットのオムニアム賞(リステッド、1600メートル)に勝ちました。
第2はやはり初年度産駒のアクアマリン Aquamarine 。既に当競馬ブログでも紹介したように、今年のアレ・フランス賞(GⅢ)に勝っています。そしてビューティー・パーラー。彼女はクラシックを制覇する前にグロット賞(GⅢ)にも勝っていますから、ディープのG勝馬は2頭、現在まで3勝ということになります。
2年間での実績ですが、ディープ産駒の主体が日本で走っていることを考えれば、これは驚異的な数字と言えましょう。ビューティー・パーラーのクラシック制覇によって、ディープの血が今後は更に海外でも求められていくことになるのは間違いありません。
日本を含めてディープの2年間を見渡すと、ビューティー・パーラーは5頭目のGⅠ勝馬となります。改めて記すまでもなく、マルセリーナ(桜花賞)、リアルインパクト(安田記念)、ジョワドヴィーヴル(阪神ジュヴェナイルフィリーズ)、そしてジェンティルドンナ(桜花賞)。
未だGⅠを複数制した馬はいませんが、GⅡ以下の勝馬を見れば枚挙に暇がないことは皆さんご承知の通り。
不思議なことは、これまでのGⅠが全てマイル戦であること。ディープ自身は1マイル戦を経験したことが無く、全て2000メートル以上のレースで圧倒的な優位を誇示してきました。それを考えると、意外な感じがしないでもありません。
もちろん現時点の結果が偶々そうなっているだけであって、ディープ産駒はスタミナに疑問あり、ということにはならないでしょう。とは言っても、モンジュー Montjeu とは逆のパターンで、そろそろ2000メートル以上のGⅠ勝ちが出ないと、あらぬ疑いを掛けられないでもありますまい。今年の優駿牝馬、東京優駿、仏オークスなどはその視点から見るのも一興と思われます。
さて本題の牝系に移りましょう。最初にお断りしておきますが、今年の仏ギニー馬2頭はレースホース2011に記載が無く、ファミリーの細部にまで調査が及びません。更にビューティー・パーラーの直近は豪州で活躍している牝系ですので、完全に網羅できていない恨みがあります。
ということで母バステット(2002年、鹿毛)は13戦2勝。エキュリー・ウイルデンシュタイン(詳しくは仏ギニー・レポート)が所有し、ウイルデンシュタイン家が所有している英国のデイトン・インヴェストメンツ Dayton Investments で繁殖生活を送っている牝馬です。
現役時代は2000メートルの未勝利戦と、4歳時にサン=クルーのリステッド戦(ペピニエール賞、2100メートル)に優勝。ビューティー・パーラーと同じエリック・ルルーシュ厩舎で、リステッド戦はパスキエが騎乗していました。今年アクアマリンが勝ったアレ・フランス賞は2着という実績もあります。
繁殖に上がったバステットの初産駒が、上記バロッチ。ディープインパクトを配合の相手に選んだのは、当時のエキュリー・ウイルデンシュタイン総裁のアレック・ウイルデンシュタインであることも先日紹介しましたっけ。
バロッチは仏2000ギニーにも出走しましたが、利あらず6着。去年最後の実戦となったプランス・ドランジュ賞(GⅢ、ロンシャン、2000メートル)では2着でした。通算7戦1勝と思われますが、現況は入っていません。
バステットの2年目の産駒がビューティー・パーラー。因みにこの後はザミンダー Zamindar の牡馬(ブークリエ Bouclier と名付けられた由)、パントル・セレブレ Peintre Celebre の娘(ブラ―ニー・ストーン Blarney Stone と命名)が続きます。
2代母はベネディクション Benediction (1985年、鹿毛、父デイ・イズ・ダン Day Is Done)は17戦1勝。アイルランド産馬で、唯一の勝利はアイルランドのスリゴ競馬場の7ハロン戦であげたもの。パターン・レースに走った経験はありません。競走馬として名前の残る存在ではありませんでした。
しかしベネディクションは繁殖牝馬として競馬史に記録される成績を残します。バステットの他は豪州(オーストラリア/ニュージーランド)での成績ですから、余り詳しいことは判りませんのでご容赦。
何と言っても1993年生まれのマイト・アンド・パワー Might and Power (黒鹿毛、せん馬、父ザビール Zabeel)に注目。この馬がメルボルン・カップとコーフィールド・カップという豪州最大のレースを連覇します。
更に1996年生まれのマター・オブ・オナー Matter of Honour (鹿毛、せん馬、父カジュアル・ライズ Casual Lies)も1400メートルのGⅢに優勝。その他彼女の産駒はほとんどが粒揃いで、1998年と1999年にはニュージーランドのブルードメア・オブ・ザ・イヤーに選ばれる快挙を成し遂げました。
ベネディクションのファミリーは現在でも活躍が続き、彼女の1991年生まれの娘ミス・プライオリティー Miss Priority (鹿毛、父カープスタッド Kaapstad)は、香港マイル(1600メートル)と香港ダービー(2000メートル)のGⅠに2勝したラッキー・オウナーズ Lucky Owners (1999年、鹿毛、父デインヒル Danehill、14戦8勝)の母となり、
更に娘スメーラ Sumehra (2002年、鹿毛、父ストラヴィンスキー Stravinsky)の牝馬・モシーン Mosheen (2008年、鹿毛、父ファスネット・ロック Fastnet Rock)が去年、オーストラリア・ギニー(1600メートル)、ランドック・ギニー(1600メートル)、VRCオークス(2500メートル)などGⅠに4勝してクラシック馬とタイトルを獲得しているのですね。
3代母キャシードラ Cathedra (1976年、鹿毛、父ソー・ブレスド So Blessed)は未勝利馬で、繁殖成績も決して一流のものとは言えませんが、それでもノルウェーで勝馬となったミス・トゥーコ Miss Tuko (1983年、牝馬、父グッド・タイムス Good Times)、2歳時にパーク・ステークス(GⅢ)を制したタントゥム・エルゴ Tantum Ergo (黒鹿毛、牝馬、父ターフィリオン Tarfilion)、イタリアで9勝したスミット Smit (2001年、鹿毛、牡馬、父ダンゼロ Danzero)などを出しました。
更に遡れば、4代母コリリア Collyria (1956年)はパーク・ヒル・ステークスの勝馬でオークス4着。5代母アイウォッシュ Eyewash もランカシャー・オークス馬。
6代母オール・ムーンシャイン All Moonshine の競走歴はパッとしないものの、名馬モスボロー Mossborough の母であり、その母セレーヌ Selene はチーヴリー・パーク、クィーン・マリー、ナッソー、フォルマス、パーク・ヒルなど現在のパターン・レースにいくつも勝っただけでなく、彼の名馬ハイペリオン Hyperion を産んだ天下の名牝。
以上、ビューティー・パーラーの牝系は英国の至宝から出で、ヨーロッパはもちろん豪州、アジアにも繁栄の枝葉を伸ばしつつある血脈と評することが出来るでしょう。
父系、母系、どちらから見てもビューティー・パーラーがスタミナ不足でオークスに負けるとは考えられません。問題は相手関係と思慮します。
ファミリー・ナンバーは、6-e 。
ディープ産駒、フランスで戴冠
既に日本のスポーツ各誌でも報道されているように、ディープインパクト産駒がフランスのクラシックを制覇しました。最早速報性はないので、当ブログではレース内容なども含めてジックリと紹介して行きましょう。
昨日はフランスとアイルランドでパターン・レースが行われましたが、やはりここはフランスのクラシックから始めます。
日曜日のロンシャン競馬場は good to soft 、やや重い状態は続いていますが、一時ほどの過酷な馬場からは解放されたようです。この日のG戦は4鞍でしたが、順序を変えてクラシックからスタート。
最初に仏1000ギニーと呼ばれるプール・デッセ・デ・プーリッシュ Poule d'Essais des Pouliches (GⅠ、3歳牝、1600メートル)。枠順が発表された時点でレポートしたように、当初は14頭が登録。当日2番枠のリリー・アメリカ Lily America が取り消して13頭立てで行われました。
既に結末が報道されているように、ディープインパクト Deep Impact 産駒のビューティー・パーラー Beauty Parlour が見事に1番人気(7対10)に応えて優勝、無敗記録を「4」に伸ばしました。次走に予定されている仏オークス(ディアーヌ賞)で無傷の二冠達成を目指します。
トライアルのグロット賞(GⅢ)を圧勝した時点でビューティー・パーラーの人気は揺るがず、レースは相手探しの様相を呈していました。既に対戦した馬には勝ち目が無く、2番人気は上がり馬でG戦初挑戦のプティット・ノーブレス Petite Noblesse が7対1。アイルランドからはオブライエン厩舎が2頭、ワッチマン厩舎が1頭挑戦。イギリスからミック・シャノン厩舎が送り込んだ去年のフィリーズ・マイル(GⅠ)2着馬のサミター Samitar が3番人気(10対1)という状況です。
レース前半はそのサミターが逃げ、3ハロンを経過した所でビューティー・パーラーのペースメーカーを務めるレガッタ Regatta が先頭を奪う展開。ロンシャンの1マイルは小回り、枠順による有利不利が歴然としているということもあり、前半を中団で待機していた7番枠スタートのビューティー・パーラーに騎乗するクリストフ・スミオンは、予定より早目に仕掛け、残り300メートルで先頭に立ちます。
結果的にはこれが奏功、最後は最後方から追い込むオブライエン厩舎のアップ Up (33対1の伏兵)を1馬身抑えて優勝。仕掛けが遅れればもっと際どい勝負になっていたでしょう。1馬身4分の3差3着も後方急襲のトピカ Topeka 。4着にオブライエン厩舎の副将格アフター After が半馬身差で続き、5着もアイルランド(ワッチマン厩舎)のファイア・リリー Fire Lily の順。2番人気のプティット・ノーブレスは8着、3番人気サミターが9着。
2着惜敗のクールモア陣営を代表してジョン・マニエー氏がビューティー・パーラー陣営に祝意を述べると、デヴィッド・ウイルデンシュタインは“ヒヤヒヤものでしたよ” と応酬する一幕も。不利な大外14番枠スタートを克服して優勝にあと一歩まで迫ったアップは、馬の能力もさることながら、騎乗したジョセフ・オブライエンにも改めて高い評価が寄せられています。
更にマニエー氏は、エキュリー・ウイルデンシュタイン(勝馬の馬主で法人組織、エキュリーは「厩舎」という意味)を牽引してきた故アレック・ウイルデンシュタインが、ディープを求めて母を極東に送った英断も讃えています。アレックが亡くなったのは2008年の初め、この時点でバステット Bastet (勝馬の母)にディープを配合させる決断を下していました。故アレックがビューティー・パーラーの勝利を自分の眼で確認することが出来なかったのは残念ですが、改めて氏の慧眼に驚かされますね。
クールモアがディープインパクトに高い評価を与えているのも、我々には嬉しいこと。この勝利を切っ掛けにディープに、そして日本産馬に世界が注目することは間違いないでしょう。
ビューティー・パーラーを管理するエリック・ルルーシュ師にとって、仏1000ギニーは1991年のダンスーズ・デュ・ソワ Danseuse Du Soir 以来2勝目。
アップに迫られ、勝馬にとってこれまでで最もキツいレースだったことを認めたクリストフ・スミオンは、2003年のミュージカル・チャイムス Musical Chimes 、2007年のダージナ Darjina 、そして2008年ザルカヴァ Zarkava に次ぐ4度目の仏1000ギニー。去年エキュリー・ウイルデンシュタインとの主戦騎手契約を交わしてから最初のクラシック制覇でもありました。
ところでエキュリー・ウイルデンシュタイン総裁だったアレック・ウイルデンシュタインは、高名な画商であり競走馬の馬主でもあった故ダニエル・ウイルデンシュタイン(2001年没)の息子。現オーナーの祖父ダニエルは名牝アレ・フランス Allez France を所有していましたが、仏1000ギニーはそのアレ・フランス(1973年)、1977年のマデリア Madelia 、1991年のダンスーズ・デュ・ソワ(前出)で3度制覇。今回がウイルデンシュタイン家としては4度目の勝利でもあります。
最近のフランス牝馬クラシックでは仏ギニー/仏オークス連覇が目立っており、ビューティー・パーラーにも2005年のディヴァイン・プロポーションズ Divine Propotions 、2008年のザルカヴァ、そして去年のゴールデン・ライラック Golden Lilac に続く快挙が期待されましょう。
陣営もロイヤル・アスコット(コロネーション・ステークス)への登録があるものの、地元に留まって仏オークスを目指す可能性が高いことを表明しています。
続いては仏2000ギニーに相当するプール・デッセ・デ・プーラーン Poule d'Essais des Poulaines (GⅠ、3歳牡、1600メートル)。英2000ギニーとは違って牝馬には出走権がありません。
そしてこちらも報道されているように、ハットトリック Hat Trick 産駒のダバーシム Dabirsim は1番人気(4対5)に支持されながら、不利があって6着に終わりました。
日本では伝えられていないようですが、結果は大波乱。しかもゴール入線直後に入着馬の1頭が骨折して騎手が落馬、馬は安楽死という悲劇も起きています。その辺りをレポートして行きましょう。
出走馬は当初登録の通り14頭。前走惜敗したものの2歳王者ダバーシムの切れ味はメンバー随一と評価、断然の1番人気でした。アイルランド(オブライエン厩舎)から2頭、イギリスからも3頭が挑戦して混戦の予感も。
レースはダバーシムのペースメーカーを務めるヴェネート Vaneto が予定通り先頭でペースを作りますが、ダバーシムはやや掛かり気味。仏1000ギニーを制したばかりスミオン騎手も馬を宥めるのに苦労している様子。
ゴール前では多くの馬が一斉に飛び込む大混戦。ダバーシムは残り2ハロンで前が塞がり行き場を失います。漸く開いた隙間を衝いて脚を伸ばしますが、再び前に馬が侵入して追えず、結局は6番手でゴール板を通過。
一応の着順は1着ルカイヤン Lucayan 、2着ヴェネート、3着ファーナーズ・グリーン Furner's Green 、4着アマロン Amaron 、5着グレゴリアン Grogorian 。但し着差は順に、短首、短首、ハナ、短首、短首、4分の3馬身。7頭がほぼ1馬身以内に雪崩れ込む激戦でした。
しかもゴールを過ぎて直ぐ、3着入線のファーナーズ・グリーンが右前脚を骨折して転倒。騎乗していたジョセフ・オブライエンは激しくコースに叩き付けられましたが、名手には運も味方しているのでしょうか、奇跡的に無傷。馬は残念ながら安楽死という劇的な結末を迎えます。
当然ながら長い審議が行われました。落馬事故、進路妨害、馬同士の接触等々。しかし最終的には着順通りで確定、何とも言えぬどよめきがロンシャンを支配しました。
勝馬のオッズは27対1、2着はペースメーカーとして出走していた馬で何と92対1、不運な3着馬が漸く3番人気(15対2)で、4着は30対1、5着が61対1という大荒れ。2番人気(9対2)のドラゴン・パルス Dragon Pulse も9着と期待を裏切っています。
英国組も散々で、グレゴリアン(ジョン・ゴスデン)の5着が最高、英2000ギニー5着のクー・ド・ヴィル Coup de Ville (リチャード・ハノン)は7着、テルワー Telwaar (ピーター・チャップル=ハイアム)が11着。
勝ったルカンヤンは、フランソワ・ロホー厩舎、ステファン・パスキエ騎乗。師にとってもジョッキーにとっても仏2000ギニーは初制覇となります。陣営では仏ダービーには向かわず、ロイヤル・アスコット(セント・ジェームズ・パレス・ステークス)を目指す由。いずれ血統プロフィールで紹介する予定ですが、兄はスペインで長距離のGⅠ戦に勝っている馬。個人的には仏ダービーは充分射程内と思うのですが・・・。
一方人気を裏切ったダバーシム。明らかに二度の不利が敗因と思われますが、陣営では前半の掛かり具合から判断し、1マイルのスタミナが不足していると判断。今後は7ハロンを最長とする短距離路線にスイッチし、ジュライ・カップを目指す意向であることが発表されています。
クラシック・レースの報告に時間を割いてしまいました。ロンシャンの残り2レースは簡単に行きましょう。
先ずクラシックの前に行われたオカール賞 Prix Hocquart (GⅡ、3歳牡牝、2200メートル)は、1頭が取り消して6頭立て。前走同じコース、同じ距離に勝ったゴドルフィンの新星で、無敗(2戦2勝)のマスターストローク Masterstroke が4対5の1番人気に支持されていました。
ブービー人気(10対1)、チーム・オブライエンのアザンス Athens が逃げましたが、抜け出したのは最低人気(112対10)のトップ・トリップ Top Trip 、本命マスターストロークが半馬身差2着、首差3着はサー・ジェイド Sir Jade の順。
前半は最後方、直線も最後で通過したトップ・トリップは、前走サン=クルーのリステッド戦(同じ距離)でも後方追込みで2着した馬。今回がG戦初挑戦でした。フランソワ・ドゥーメン厩舎、トーマス・ユエット騎乗。
最後はクラシックの後で行われたサン=ジョルジュ賞 Prix Saint-Georges (GⅢ、3歳上、1000メートル)。11頭が出走し、1番人気(7対2)は3歳牝馬のザンテンダ Zantenda 。フレディー・ヘッド厩舎、オマール賞(GⅢ)勝馬でマルセル・ブーサック賞(GⅠ)3着の実績。クラシックを目指していましたが、前走グロット賞で惨敗し短距離に路線変更してきた馬。
そのザンテンダは中団から追い込みましたが6着と期待を裏切り、優勝は後ろから3番目の人気(187対10)だったビヨンド・ディザイア Beyond Desire の逃げ切り。一時2馬身あった差は短頭差まで詰められましたが、2番人気(9対2)ムシュー・ジョー Monsieur Joe の追い込みを凌ぎました。3着は1馬身で最低人気(29対1)のカラホラ Calahorra 。
ニューマーケットでロジャー・ヴァリアン師が調教するビヨンド・ディザイアは、前走バース競馬場の5ハロン戦を逃げ切ったばかり。去年の最終戦ではアベイ・ド・ロンシャン賞(ブービー)にも挑戦していました。騎手はジェイミー・スペンサー、英国スプリンターの優位を証明したレースでもあります。
ということで穴馬が活躍したロンシャンを離れ、次は同じく good to soft のアイルランドはレパーズタウン競馬場。こちらもG戦は3鞍と忙しいレポートです。
最初のアメジスト・ステークス Amethyst S (GⅢ、3歳上、1マイル)は至ってシンプル。5頭立ての断然1番人気(1対5)に支持されたフェイマス・ネイム Famous Name が、これまた確たる2番人気(11対2)のスイート・ライトニング Sweet Lightning を問題なく4馬身半破って圧勝。3着も同じく4馬身半差でバラック Barack 。
デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のフェイマス・ネイムは、誰でも知っているレパーズタウン巧者の7歳馬。このコースは11勝目、GⅢは9勝目、アメジスト・ステークスは3連覇と付け入る隙はありません。コース11勝は新記録じゃないでしょうか。このあとは去年2着のトトソルズ・ゴールド・カップに向かうでしょう。
続いてデリンスタウン・スタッド・1000ギニー・トライアル Derringstown Stud 1000 Guineas Trial (GⅢ、3歳牝、1マイル)。10頭立て、ダンダルク競馬場の未勝利戦を18馬身の大差で圧勝したダントル Duntle が1番人気(4対1)に支持されましたが、実績上位の2番人気(13対2)イエロー・ローズバド Yellow Rosebud が貫録を見せ付けて快勝しています。
2着は1馬身でデヴォーション Devotion 、短頭差3着にコーラル・ウェイヴ Coral Wave 。本命ダントルは4着に終わりました。
中団から抜けて安定感を示したイエロー・ローズバドは、デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗。調教師、騎手ともパターン・レース・ダブル達成。
去年のデビュタント・ステークスでメイビー Maybe の2着、マルセル・ブーサック賞遠征でも4着と実績を残した同馬、2週間後のアイルランド1000ギニーに向かうのは当然でしょう。
最後はデリンスタウン・スタッド・ダービー・トライアル・ステークス Derringstown Stud Derby Trial S (GⅡ、3歳、1マイル2ハロン)。5頭立て。負けることはあり得ないと思われていたBCジュヴェナイルの覇者、オブライエン厩舎のロート Wrote が断然人気(8対13)に応えられず惨敗。番狂わせとなりました。
ロートはペースメーカーの助けを借りて万全に見えましたが、3番手追走も4コーナーで一杯。ズルズルと後退して2着から7馬身半も離された3着。クラシックに向けての立て直しは難しいかも知れません。
替って健闘したのはペースメーカーのタワー・ロック Tower Rock 、待てど暮らせど来ない本命馬を尻目に最後まで粘りましたが、結局は2番手を進んだ2番人気(15対8)のライト・へヴィー Light Heavy に首差捉えられました。
ライト・へヴィーはジム・ボルジャー厩舎、ケヴィン・マニング騎乗。ダービー・トライアルとは言ってもエプサムには向かわず、カラーの愛ダービーを目標するようです。
ボルジャー厩舎のエース、パリッシュ・ホール Parish Hall (去年のデューハースト勝馬)は愛2000ギニーに出走予定で、結果が良ければこの馬がエプサムに挑戦する由。強かなボルジャー師のこと、そのプランは脅威となりそう。

